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不正行為をはたらいた社員に懲戒処分が決定するまで命じた自宅待機期間は無給でもよい?

  • 投稿日:2024/2/28
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Q:社内で不正行為をはたらいた社員がおります。これから事実確認のための調査を行いますが、懲戒処分が決定するまで当該社員に自宅待機を命じたいと思っています。この自宅待機期間は無給としてもよいでしょうか。

A:自宅待機は懲戒処分ではなく、不正解明の調査のために必要な業務命令ですから、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたり、原則として労働基準法第26条に定める休業手当(平均賃金の100分の60以上)の支払が必要です。
 

1.自宅待機という業務命令

このような場合の自宅謹慎は、それ自体として懲戒的性質を有するものではなく、当面の職場秩序維持の観点から執られる一種の職務命令とみるべきものであるから、使用者は当然にその間の賃金支払い義務を免れるものではない。
(日通名古屋製鉄作業事件:平成3年7月22日名古屋地裁)



たとえ不正行為をはたらいた社員とは言え、労働法にその権利を守られています。
懲戒処分前であれば労働し賃金を得る権利があるわけですが、それを使用者の業務上の命令として自宅待機させているわけですから、原則として休業手当の支給が必要です。

 

2.二重処分ができない



なお、懲戒処分では「1の不正行為に2以上の処分を適用しない」という二重処分禁止ルールがあります。 裁判で判決が決まった後に、もう一度裁判をやり直すことができないルールと同じです。
したがって、不正の調査は迅速かつ慎重・丁寧に実施し、余罪の「とりこぼし」がないように細心の注意が必要です。
さて、懲戒処分前に無給の自宅待機を命じた場合、これが処分の一種である「出勤停止」に該当する と判断される 場合があり、そうなると改めて「減給」「降格・降職」など他の処分を適用することが不可能となります(前記の二重処分にあたります 。 ただし、懲戒委員会に諮って出勤停止処分を決定し、これに先立つ無給の自宅待機期間を当該処分である出勤停止期間に転用することは可能です。
このような運用をしたい場合は、あらかじめ就業規則の懲戒について定めた条項に、その旨を記載しておく必要があります。



情報元:提携先  北桜労働法務事務所ニュース