すでに2009年3月卒業予定者の就職戦線がスタート。
最近の景気回復を背景に、将来の中核社員としての新卒採用のニーズは高まる一方です。
しかし反面では、入社後3年で3割が離職するという現実は、一向に改善の兆しがみえません。
ではなぜ、新入社員は定着しないのでしょうか?
その答えを探るために、新卒者を含めた若年者の離職の現実とその理由について調査してみました。
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が、2006年9月から11月にかけて、全国の従業員数100人以上の企業10000社(従業員は1社当たり10人)を対象に『若年者の離職理由と職場定着に関する調査』を行っています。有効回収数は、企業調査が2169社(有効回収率21.7%)、従業員調査が13320人(有効回収率13.3%)。従業員調査の対象は企業に在籍する35歳未満の若年者(正社員)で、新卒・中途別で見ると55.1%が新卒者で、42.3%が中途採用者となっています。
その中途採用者の前職での勤続年数は、前職が正社員だった者は勤続3年未満が53.0%、非正社員だった者では勤続3年未満が81.3%にのぼっています。つまり中途採用者の半数以上が3年以内で転職していることがわかります。これらを背景に、企業側に若年者の離職による困窮度を尋ねた質問では、困っている企業の割合が48.8%で、困っていない企業の47.7%を上まわっています。そして若年比率が高まるほど、困っている企業の割合は高くなる傾向にあります。
では、若年者の離職理由は何だったのでしょうか。まず前職での仕事の満足度を聞いた質問に、正社員では66.2%、非正社員でも48.7%が不満と回答しています。その具体的な理由が、図1『前職の離職理由(複数回答)』です。それによると、もっとも多いのが「給与に不満」で34.6%、次に「仕事上のストレスが大きい」31.7%、「会社の将来性・安定性に期待が持てない」28.3%、「労働時間が長い」26.9%、「仕事がきつい」21.7%などとなっています。
さらに、離職の理由を企業側と従業員側の比較から見たのが、図2『企業と従業員の離職理由の比較』です。従業員は前職が正社員の中途採用者です。それによると、企業側が「家族の事情や給与、人間関係、仕事のきつさ、キャリアアップ」を離職理由と考えているのに対して、従業員側は「仕事のストレスが大きい」39.3%、「給与に不満」35.4%、「労働時間や休日・休暇に不満」34.7%、「仕事がきつい」26.8%と答え、両者の間にズレがあることがわかります。
また興味深いのは「最初に転職を考えた時期」で、「入社して1年くらい」が25.0%ともっとも多く、次に「入社して3カ月以内」の19.7%となっています。新卒と中途では「1年くらい」が23.6%と27.3%、「3カ月以内」が17.7%と22.2%となっています。では若年者を定着させるには、どのような施策が必要なのでしょうか。その参考になるのが、図3の『従業員が求める若年者定着対策』です。もっとも多かったのは「賃金水準を引き上げる」で42.1%(新卒者)、次に「休日を取りやすいようにする」24.3%(新卒者)、「本人の希望を活かした配置を行う」25.7%(新卒者)と続いています。
これらのデータを踏まえて当社では、独自に九州・関東・関西の120社の企業を対象に、2007年11月に『新卒採用(2008年度採用)に関するアンケート調査』を実施しました。それによると、79.2%に当たる95社が新卒採用を行い、そのうち37.9%の36社が採用人数が増えたと答えています。一方、新卒者一人あたりの採用コストについては、「変わらない」が59.2%ともっとも多いものの「増加した」と答えた企業も20.0%にのぼっています。採用エントリーの受付方法は、「リクナビなどの求人サイト」が39.2%ともっとも多く、次に「自社ホームページ」20.0%、「両方の併用」14.2%となっています。
では、採用した新入社員の定着率はどうなっているのでしょうか。その結果が、図4『3年後の新入社員の定着率』です。それによると、「100%」が24.2%ともっとも多く、次に「90%台」22.5%、「70%台」13.3%となっています。「70%台以上」で合計すると70.8%、「50~60%台」が12.6%となり、前出の全国調査の62.1%、12.4%(40~60%台)よりは高いものの、ほぼ似たような傾向がつかめます。
続いて、全国調査と同じ項目で、『新入社員の離職理由』を尋ねたものが、図5です。この「離職理由」を、前出の全国調査の従業員側から見た「離職理由」と比較してみると、ここでも双方にズレがあることがわかります。企業側は「職場の人間関係がつらい」(28.2%)がトップなのに対して、従業員側は「給与に不満」(34.6%)がもっとも多くなっています。また「給与に不満」や「仕事上のストレスが多い」は双方とも比率が高い項目です。そのほか、両者で大きなズレがある項目としては、「会社の将来性・安定性に期待できない」(3.8 %と28.3%)、「労働時間が長い」(14.1%と26.9%)、「仕事がおもしろくない」(15.4%と21.0%)となっています。つまり、従業員側は、仕事の内容や将来性、ワークバランスなどに対して不満を持っていることがわかります。
ではこうした新入社員の離職に対して、企業側は実際にどんな対策を行っているのでしょうか。まず内定者の辞退防止のための取組みについては、61.7%の企業が実施していると答えています。その内容は、「内定式」が48.6%、次に「研修」の45.9%、「会社行事への参加」21.6%となっています。また同じく新入社員研修については、93.3%とほとんどの企業が行っており、内容は「自社独自」51.8%と「自社と外部の併用」34.8%が大半を占めています。
しかし、入社後のフォローアップ研修になると、行っているのは52.5%と半数に減り、行っていない企業が40.0%にのぼっています。実施時期としては、「6カ月以内に行う」が66.6%で半数以上となっています。さらに、社員向けの「新入社員受入研修」を行っている企業は20.8%に過ぎません。入社するまでの短期的な対策や研修は行うけれど、長期的な視点で研修を行う企業はまだ少ないことが見てとれます。これは、配属およびその後について尋ねた結果にも表れています。「配属先の決定はどのように行っていますか」という質問には「補充が必要な部署に優先して」が83.4%を占め、「新入社員の希望どおり」は8.3%に過ぎません。また教育担当者(メンター)を採用している企業も37.5%に留まっています。新入社員を含めた若年者の早期離職をくい止めるには、入社後の研修はもちろん、受入れ配属先であらゆる機会をとおして仕事の意義やおもしろさを実感させるなど、モチベーションを維持するような方策をこま目にとる態勢が必要であると考えられます。
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