賞味期限食材の使用、リコール隠し、ガス器具事故、さらに偽装請負・・。
わが国を代表する企業で次々と起こる不祥事の数々。
対応を誤れば、長年にわたって築いてきたブランド価値も一瞬にして吹き飛び、企業
の存続さえ危ぶまれます。
今日ほど、企業のコンプライアンスが問われている時はないでしょう。
健全な会社発展に不可欠なコンプライアンス経営について探ります。
大手食品メーカーの賞味期限偽装や自動車メーカーのリコール隠し、さらにガス機器事故の隠蔽など、企業による不祥事・犯罪が相次いでいます。こうした事件が起こるたびに、企業のコンプライアンスの重要性が叫ばれ、先進的な企業では社内のコンプライアンス体制を強化し、コンプライアンス教育を充実させています。
しかし、「コンプライアンス=法令遵守」という一般的な捉え方だけでは、ますます求められる企業の社会的使命に応えられないだけでなく、企業の発展や存続にも大きな影響を及ぼす恐れがあります。帝国データバンクの調査によれば、2006年上半期
(4月~9月)に、コンプライアンス違反を倒産の理由のひとつとして、法的整理となった企業は53件で、前年同期比39.5%増、負債総額は1548億7900万円にのぼっています。企業経営にとって重要性を増すコンプライアンス。求められる背景、正しい考え方や
対応について見ていきたいと思います。
人材サービス分野でのコンプライアンス違反に目を向けると、大きな社会問題となったのが「偽装請負」です。偽装請負とは、実態は派遣なのに、派遣労働者への雇用契約申込み義務や安全確保義務を負わない請負契約に見せかけるものです。日本を代表する電子機器メーカーでも偽装が発覚して問題化し、偽装請負追放と直接雇用へ向けた動きが加速しています。これを受けて、昨年10~11月にかけて厚生労働省による 「偽装請負適正化キャンペーン」が行われました。その中で、各労働局が是正指導を行った件数は、首都圏で386件、大阪で70件にのぼったことが分かりました。これを違反率(是正指導した件数を指導監督した件数で割った値)で見てみると、首都圏で58%、大阪で76%という高い数字となりました。つまり、人材サービス分野での企業のコンプライアンス意識の問題点を裏付けるデータといえるでしょう。 こうしたことを受けて、今年2月15日には、技術者派遣大手のメイテックや製造請負の日本エイムなどが、業務受託する際の法令遵守を徹底するため、「日本エンジニアリングアウトソーシング協会」を設立し、業界の健全化へ向けた取り組みを開始しました。会員企業の審査を行い、法令遵守を徹底する企業だけに入会を認めるほか、顧客企業のメーカーや請負労働者に向けた広報活動にも取り組むとしています。
企業に強くコンプライアンスが求められるようになった背景ないし理由には、前述したような企業不祥事の頻発があります。ことに2000年ぐらいから食品の偽装表示やリコール問題など、わが国を代表する企業での不祥事が新聞紙上を賑わすようになりました。
コンプライアンス(compliance)は、一般的には法令遵守と訳されます。しかし、そこで遵守されるべきものは法令だけでなく、社会良識、社会ルール、社内の規則・規定等も含まれます。コンプライアンスについてまとめられた定義の例を紹介しましょう。
「いわゆる法令遵守はもとより、社会の構成員としての企業人、社会人として求められる価値観・倫理観によって誠実に行動すること。それを通して公正かつ適切な経営を実現し、市民社会と調和を図り、企業を創造的に発展させていくこと」(経営法友会マニュアル等作成委員会)また、桐蔭横浜大学法科大学院教授で同大学コンプライアンス研究センター長の郷原信郎氏は、「コンプライアンスはもともと『充足する』
『調和する』という意味であり、工学的には『物体のしなやかさ』を示す言葉です。すなわち、コンプライアンスとは組織に向けられた社会的な要請に応え、しなやか、かつ鋭敏に反応しながら、企業の目的を実現していくことです。したがって、法令規則をそのまま守ることがコンプライアンスではありません」と述べています。
内閣府経済社会総合研究所が、2004年10月に実施し、国内主要企業942社から回答を得た、コンプライアンスに関するアンケート調査があります。
それによると、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)に関して、社内規定を定めているかという質問には、「定めている」という企業が68.0%、「定めていない」という企業が31.4%でした。この結果について報告のまとめでは、「大企業を中心としたアンケートにおいて、約3割の企業がまだ定めていないという結果は、最近のCSR、コンプライアンス意識の高まりを踏まえれば、やや意外であった」と述べています。
もっとも、一般的な傾向として、大企業になればなるほど十分な社内規定が備わっていることがわかります。すなわち、従業員1000人未満の会社では、CSR関連の規定を定めているのは58%に止まりますが、従業員5000人以上1万人未満では84%で規定が存在し、従業員1万人以上では95%の企業で、すでにCSR関係の社内規定が整備されています。これは企業規模が大きくなればなるほど、多数の人が企業の「一員」として活動しているので、事前にあるべき姿勢・規範を示すことが極めて重要であること、第二に大企業であればCSR規定の整備に関わるコスト負担にも十分耐えうることから理解されると評者はまとめています。
次に、企業が具体的にどういう項目についてCSRを考えているかに関する質問では、もっとも多かった回答が「企業倫理、法令遵守」でしまさにコンプライアンス経営が目指している対象事項といえるでしょう。これに次いで、公正取引関係、労働環境の維持、顧客情報を含めた消費者対策が、高い割合でCSRの対象とされていることがわかります。
企業の社会的責任(CSR)が厳しく問われる今日、コンプライアンス経営の重要性は、今後ますます高まることが予想されます。しかし、日本の企業の多くでは、コンプライアンス・プログラム制定への取り組みはようやく始まったところといっていいでしょう。また、コンプライアンス・プログラムを企業の訴追・処罰に対する「保険」ととらえる風潮も存在するように思われます。しかし、コンプライアンス・プログラムの実施が、即、企業の「免責」につながるわけではありません。むしろそれ以上に企業の社会的信用やイメージを左右し、企業の成長や存続に大きく影響するものといえます。
こうした背景を受けて、アソウ・ヒューマニーセンターグループでは、お取引先企業のコンプライアンス経営の一助となるべく、新たに『労働者派遣法コンプライアンス・ハンドブック』を作成しました。今後も、労働者派遣法のみならず、広く人材サービス全般に関するコンプライアンスのご相談に応じ、制度づくりなどのコンサルティングから具体的な対策までを実施してまいります。人材サービスに関するコンプライアンスについて、疑問点やお困りの点などありましたら、どのようなことでもお気軽にご相談いただければ幸いです。
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