景気回復、雇用情勢が好転を見せる一方で、職場のメンタルヘルスの低下が指摘されています。
ワークストレスや不安格差の高まりの中で増加する「心の病」。
働く士気や生産性向上にも大きく影響する職場のメンタルヘルス対策について探りま
した。
財団法人社会経済生産性本部が、2001年より毎年発表している『産業人のメンタルヘルス白書』。その2006年版によれば、1998年を境に職場において不安格差が生じていることを明らかにしています。過去25年間にわたって250万人を対象に実施してきた「心の定期健康診断システム-JMI健康調査」のデータに基づき、「1998年の変換点~JMIの経年変化にみる勤労者意識の変化~」を導き出しています。1998年は、金融機関の破綻が相次ぎ、自殺者が3万人を超えるなど大きな変化のあった年です。この年を境に、自信の欠如(自己不確実、劣等感、弱志)と不安格差(抑うつ、不安、偏倚)が高まり、職場全体のメンタルヘルスを低下させていることを指摘しています。
「抑うつの経年変化」と「不安の経年変化」をたどったグラフです。「抑うつ」は、1998年まではわずかに下降ぎみだったのが、1998年を変換点として上昇傾向に転じています。標準偏差も1998年を境により大きく上昇に転じているのがわかります。一方、「不安」についても同様の傾向が見てとれます。このほか、「自己不確実」「劣等感」「弱志」「偏倚」などの項目も悪化をたどっており、その背景には1998年を変換点とした大きな社会変動があります。仕事の負担感、仕事への意欲、仕事への適応感、同僚との人間関係、上司との人間関係、評価への満足感などの面での「格差の広がり」であり、いずれも格差が拡大すれば全体のレベルが低 下するという傾向を白書は指摘しています。
次に、具体的な企業におけるメンタルヘルスへの取り組みについて見ていきましょう。
2006年4月に実施され、上場企業218社から回答があった「メンタルヘルスの取り組み」に関するアンケート調査結果を基に、同白書はまとめています。まず「健康づくりで力を入れている施策」では、メンタルヘルスに関する対策は定期健康診断に続く第2位(59.2%)に上がっています。2002年からの経年変化を見ても、急激に上昇していることがわかります。業種別で見ると特に製造業で高い割合(65.3%)になっており、また従業員数別では従業員が多い企業ほど割合が高くなっていることを指摘しています。
さらに、「メンタルヘルスの取り組みの考え方・目的」について見てみると、グラフのような順番となっています。これを従業員数別でみると、「疾病予防・健康の保持増進のため」と「従業員・組織の生産性向上のため」の回答率は、従業員数の多い企業ほど割合が高くなるとしています。特に3000人以上の企業においては、第1位と第2位は同率で35.4%と高く、また第3位の「従業員・組織の生産性向上のため」の回答も21.5%と高い水準にのぼっていることが指摘されています。つまり、従業員数の多い企業では、メンタルヘルスを従業員の健康の保持を通じた生産性の向上施策として位置づける傾向が強いと考えられます。
企業が「心の病」に対して抱えている課題についても見てみましょう。まず、最近3年間の心の病の増減傾向について尋ねた質問では、6割以上(61.5%)の企業が増加傾向と回答しています。従業員規模別にみると、1,000人未満の企業では55.9%、1,000人から2,999人の企業では60.2%、3,000人以上では66.2%にのぼっています。過去2回の調査と比較しても、「増加傾向」と答えた企業は48.9%から61.5%へと急速に高まるなか、「横ばい」と「減少傾向」の割合は減少していません。つまり、メンタルヘルスの問題をそれほど認識していなかった企業が、この数年間に自社の現状を初めて明確に認識してきたケースが多いことがわかります。
次に「心の病」の原因についてはどう捉えているのでしょうか。一番の原因と思われることは、「職場の人間関係」(25.2%)、「仕事の問題」(17.4%)、「本人の問題」(17.0%)の順で回答率が高くなっています。また業種によって捉え方に差が出ており、製造業は「職場の人間関係」(25.9%)が第1位であるのに対して、非製造業は「本人の問題」(25.9%)が第1位で「職場の人間関係」(20.0%)が第2位になっています。
2004年の調査と比べると、「職場の人間関係」の回答率が大きく上昇しており、職場や仕事の関係を原因と見る傾向が全体として強まっています。従業員に「心の病」が発生するということを、本人や社会環境の問題とするのではなく、職場の問題として捉え、職場でできる限りのことをしていこうという姿勢がより一般的なものになってきていると白書は結んでいます。
メンタルヘルス対策は今後、企業にとって不可欠の要素となっていくでしょう。しかし、具体的にどういう方法や施策を行えばいいのか、戸惑っている企業が多いのも事実です。まず第一に必要なことは、職場や仕事を取り巻く環境、本人の経験や人間性など、現在のストレス環境を正確に把握することです。そして、その結果をもとにストレスの分析と対策を行うことが重要です。
アソウ・ヒューマニーセンターグループでは、こうしたメンタルヘルス対策のためのワークストレス・マネジメントを行うツールとして、MSI(Multifacet Stress Index:ワークストレス総合インデックス)をご紹介しています。MSIは、多くの企業の中で実際に働く人々のデータを収集し、組織心理学の基礎研究を基盤に開発され、会社で発生するストレスとその原因を測定し、その結果から組織分析を可能とするツールです。仕事を肯定的に捉えているか、上司とうまく行っているか、仕事への満足度、制度・賃金への満足度、今後の目標・キャリアなど、多面的なストレス項目から個人のみならず組織におけるストレス要因を分析します。MSIを活用することで、個人のストレスを分析・マネジメントし、社内のモチベーションアップにつなげることが可能となります。さらに、組織での施策の評価や職場風土形成のための情報も提供することができるのです。
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